前回に引き続き、今回も大気の熱力学のお話ですが、今回は面倒な数式が少なく、身近な現象が多め。まずは、猛暑の元凶(一因?)フェーン現象について
フェーン現象というのは、湿った空気が山を越える時に雨を降らせ、その後山を吹き降りて、乾燥し気温が高くなる現象。または、上空の高温位の空 気塊が力学的に山地の風下側に降下することにより乾燥し気温が高くなる現象の事です。(気象庁の用語解説)日本では、1933年(昭和8年)7月25日の午後3時、山形県山形市の気象官署で日本における当時の最高気温40.8℃を記録したのもフェーン現象が一因とされているそうです。気象予報士講座の3章 大気の熱力学2 ではこの現象についての理解が深まります。(この現象だけではないのですけども)
フェーン現象
まずはこの章の問題演習を見てみましょう。2000mの山を湿った空気塊が越えていく時、超えた先(B)での温度はどうなるか? と言う事です。この設問の答えは、(元の温度が20℃にも関わらず)山を超えたB地点での空気塊の温度は25℃に高くなっているというものです。この現象をフェーン現象というそうなのですが、この時キーとなるのが、乾燥断熱減率と湿潤断熱減率になります。(この違いで温度が高くなります。)
乾燥断熱減率については2章で勉強しました。乾燥している(つまり未飽和の)空気塊が断熱的に上昇した場合に、高度が上がるにつれてその空気塊の気温が下がる割合でした。これは、1000mにつき9.8℃の割合なので、図のように線形の単純な形になります(しかも計算問題の際には、1000mにつき10℃とされる事が多いようで計算が楽で素敵)。これだけなら楽チンなんですが、湿った空気塊(つまり飽和している空気塊)だとこのような単純な線にはならず湿潤断熱減率のような曲線になります。このときの減率は、1000mあたり、対流圏下層では6~7℃になるそうです。上記の設問では、1000mまでがこの湿潤断熱減率、以降が乾燥断熱減率で山頂まで推移し、以降、山を下るときに乾燥断熱減率に従って温度が上がるので結果的に温度が高くなる、という結果になります。(詳しくは、気象予報士講座の3章を受講すると良いです。)
その他の興味深い話題としては、この章では、大気の鉛直安定度がありました。空気塊が上昇する環境があると雲などできやすく大気が不安定というと。でそれは当然、空気塊の周りの温度より高い場合となります。つまり、天気予報などでよく聞くフレーズ、「本州の上空にはこの時期としては冷たい空気が流れこんでいるため、大気の状態が不安定となっています」はつまりこう言う事か、とわかります。なんだか上空に冷たい空気があると不安定なんだ、というか、雨とかの現象の、半ば枕詞のように聞き流してましたが、このフレーズは、考えてみれば当たり前の現象を説明してただけなんですね。暖かい空気は上にいく、というのは小学校か中学校の理科レベルの知識でとっくに知っている訳ですが、思いの外、身の回りの現象と関連付けて考えていないものです。
が勿論、世の中そんな単純ではなく、大気中はには乾燥した空気だけがあるわけではなく、湿った空気もあり、そうすると単純な線形の世界ではなく、曲線が出てくる事になります(湿潤断熱減率)。
とりあえず、この章では、湿った空気の場合はそんな単純にはいかないぜ、という部分と、それでも単純にいく部分(乾燥断熱減率の内側と湿潤断熱減率の外側)の名称の説明に留まります。なんとなく、この曲線を解析しだすと微分が必要になってくる予感がしますが、まだでてこないので気にしない事にします。
でおまけに、この章で気になった曲線。実際の大気の温度が状態曲線として示され、乾燥断熱減率と湿潤断熱減率の切り替わりや、状態曲線と交わるところの名称についての説明です。まぁ、これはこれで、そういう定義として。なんで、状態曲線が三次関数みたいな曲線になってるんでしょうね。湿潤断熱減率だけだと二次関数っぽい形に収まる気がするので、まだきっと別の要素があるのかもしれません。そのあたりの解明は、今後の楽しみ、という事で・・・。
それでは次回、第4章 降水過程 で会いましょう。
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記事の投稿者
中村 央理雄
株式会社キバンインターナショナルの取締役。代表取締役の西村とKiBANを創業しました。eラーニングの導入後の集合研修やLMSの導入サポートを担当しています。プログラム・デザイン・ネットワークなど、創業時は、いろんなことを経験しましたが、それらのノウハウを全部活かしてeラーニングの導入を支援しています。